ふさぎガチ

オギェッセイ#14 殆どの恋愛に愛はない

2022-10-11

彼が家を出て行ってすぐ、同じコミュニティで遊んでた人が距離を一歩詰めてきた。
もともと東京に住んでいたが、事情があって実家へ戻っている人だった。
そこまで親密でもなく、あまり個人的な話をしない人だったが、
深夜のオンラインゲーム内のチャットでお互いの話をするようになり、
耳触りの良い言葉を交わすようになった。

相手の家の事情がある程度落ち着いた頃、「東京に戻ろうかと思っているけど、東京の仕事がすぐ見つかるか不安だ。」という話をしてきたので、安定するまで一緒に住む?と提案し、続けざまに同棲する事になった。
先方の事情も複雑だったので、家賃光熱費は仕事が見つかるまでは難しいと言ってきたので、数ヶ月くらいは大丈夫だよ。と言った。
食事を作って食べて貰うのが嬉しいという事と、週に一度セックスがあると、気持ちがあるんだと思って安心する。と言うので、決まりごとにした。

1ヶ月程経った。

彼は一日中家でゲームをしていた。
自分の帰りに合わせて作ってくれた食事をしながら、
『仕事どう?』
と聞くと、
「なかなか難しいね」
と言う。
彼と水曜日にセックスをした。

「お風呂のこびりついた汚れ落とすの大変だった」
というので、
『そこまでしなくていいよ』
というと、
「元彼も住んでたんでしょ?そんな汚れ嫌だよ」
と言う。

3ヶ月程経った。

帰ってくると、Youtubeのダンス動画を見ながら踊っていた。
食事をしながら、
『仕事どう?』
と聞くと、
「震災後で面接がキャンセルになった」
と言う。
彼と水曜日にセックスをした。
『たまには何処かに出かけようか』
と聞くと、
「遊ぶお金がないから…」
と言った。
嫌なことを言わせてしまったな。と思って仕事が見つかるまでは聞かないでおこうと思った。

6ヶ月程経った。

食事をしながら、TVを流れるCMのクリエイターの文句を言っていた。
この人どの立場から言ってるんだろうと思った。
『今月家賃入れられそう?』
と聞くと、
「まだ難しいかな」
と言う。
「先週セックスしてないよ」というので、
水曜日にセックスをした。
苦痛だった。

そのあたりから1年半くらいまで、交わしたのは身体だけで何があったかほとんど記憶にない。
ただ、同じ事の繰り返しだったんだろうと思う。
自分がこの人を手放したら死んでしまうではないだろうか。という哀れみの気持ちしかなかった。
相手を思うからしてるのではなく、している自分が好きなんだなと思った。
途中から遅くまで残業をしたり、ありもしない飲み会の予定が入ったといって、できるだけ水曜日に家に帰るのを避けた。
飲み会で知り合った相手の家に止まったり、出会い系で知り合った相手の家に泊まった。
この時、初めて浮気をした。
浮気相手には「自分は"付き合いたい"人だよ」と言われたり、「もう帰るんですか」と言われた。
そこには数年前の自分が居た。
あの時憎くて堪らないあいつらに自分がなっていた。
どうしようもない自己嫌悪に陥った。
家に帰って木曜日だったけどセックスをした。
苦痛だった。

とうに未来が見えない相手への好意は事切れていた。

大晦日、除夜の鐘がなり始まったタイミングで別れ話を切り出した。
除夜の鐘がなり終わる前にすべて話し、
『じゃ、二丁目行ってくる』
と言って家を出た。最高に楽しかった。

金銭面に余裕がないことは知っていたので、出ていくお金が貯まるまでは居ていいよ。と言ったが、なかなか出ていかなかった。

別れた後も、寝ている私のズボンをおろしてしゃぶって来た。
自慰感覚で射精すると相手は満足そうに寝た。
気持ち悪いなと思った。

別れた途端に仕事を見つけてきた。
やりゃ出来んじゃん。と思った。

ついでに新しい彼氏を作っていた。
彼氏作る前に貯金だろ。と思った。

昼間に徹子の部屋を見ていると、咥えていい?と聞かれたので徹子を見ながら射精した。
満足そうな顔をしていた。
彼氏が出来たばかりなのに、元彼の咥えて喜ぶなんて気持ち悪いな。
そんな事で気が引けると思ってるのかな。と思った。

とある夜、大勢が集まる飲み屋でたまたま居合わせ、相手の彼氏を紹介されたので、(どうも、未だにしゃぶられてる元彼です。)と思いながら挨拶をした。

それでも家を出ていかなかったので、期限を決めてようやく出て行った。
彼のコミュニティの人とは疎遠になったが、どこかで偶然会った時に、別れた理由が”おぎの向上心が強い為”という事になっていた。
自分は"甲斐性がなく"て"向上心が強い"人間なんだなと思った。
思うか馬鹿。

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