ふさぎガチ

オギェッセイ#13 付き合うってなんなんだ

2022-09-27

二丁目に出るのを控えるようになって、それまでに遊んでた人との交流も無くなり、四年ほど過ぎた。
もともと頻繁に合う間柄のような人も居なかったし、会えば楽しいけど、会わなければ会わないでいられる距離感の付き合いが多かったので苦ではなかった。

それは今でもそうだ。

「信じられぬと嘆くよりも 人を信じて傷つく方がいい」と日本一有名な教師役は歌ってた。
信じるのが悪いとは言わない。裏切るような人を信じてしまった自分の過去と向き合い、無闇に自分の手綱を人に預けないようにしている。
いつ居なくなっても良い距離感のまま、人と向き合うことが自分には合っている。
絶望しているわけでも、諦めてるわけでもなく、ただそれが性に合ってると分かった。

細々とした出会いはあったが、金銭的余裕もなく、かと言って人を頼れる程に無邪気ではない自分は、短期間の始まりと終わりを繰り返していた。

ある日、知り合ったその日に酔ったままホテルに行った相手との帰りしな、相手が『元彼と同居してるけど、しんどい』と言うので、「じゃあ家にくれば」と言って初めての同棲が始まった。ぶっちゃけノリだった。

今身近な誰かが同じ状況になって居たら、全力で止めるだろう。
でもその時のオギの近くに今のオギは居ないのでしょうがない。

六畳一間の自分の家に棲み始めてしばらく経った。
相手の家に不幸があり、相続したお金があるのでしばらくは働かなくても暮らせると言っていたので、当初は気に留めていなかった。

その後、会社の取引先に誘われたのをきっかけに、フリーランスになったタイミングで、この部屋でこの先生活を続けて行くのは厳しいだろうな。と思い二人の先の事を考えた。

相手はまだ仕事をしていなかったので、
「この先仕事はどうするの?」と聞くと、
『そういう事には触れられたくないし話したくない』と言われた。
それ以上は踏み込んでくるな。という表情だ。

翌日、その事がなかったようにこちらに甘えて来るのであっけに取られた。
二人の将来の為の話をする事は、どうやら付き合う事には含まれないらしい。
一緒にゲームをして、セックスをして、飯を食べる生活を続ける事だけが求められる事らしい。

その件があってから、付き合うってなんなんだろうか。という事が頭の中を埋め尽くし、相手の愛情表現も受け入れられず、夜の営みも断るようになって行った。

付き合って一年経ったか経たないかの頃、彼はオーブンレンジをプレゼントしてくれた。
「ありがとう」と言うと、
『もう一つお話があります。浮気で病気になりました。』と言った。

口調が荒くなるくらいの感情は残っていた。
「なんでやったのか」と彼を責めると、

『それは貴方に甲斐性がないからでしょ。でも好きなのは貴方だよ』と言われた。
そうか。将来の話はしたくない。だけど付き合った相手とセックスを続ける事は”甲斐性”なのか。
外でセックスをする時に、危険性を孕んだ行為に及ぶのは"好き"に含まれないのか。

性交渉はなかったが、一緒に生活はしていたのですぐに保健所の検査を受けた。
当時はU=Uなどの概念がそんなに一般的ではなかったので、緊張していた。
陰性の結果を伝えた時、相手は安心して泣いて居たが、別れを告げた。

彼はすぐさま新しい相手を作り、相手の住む土地へ越して行った。
自分が性行為を続けなかった事で、相手に何かを背負わせてしまった。という罪悪感と向き合わずに済んだ事にホッとした自分が居た。

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