ふさぎガチ

オギェッセイ#09 横暴な好意

2022-07-27

その頃店事して働いてる店のお客さんと何気ない会話をしている中で、
自分が上京当時からよく聞いているアーティストが一緒だ、という事で仲良くなった原田(仮称)という人が居た。

最初はなんだか距離を感じる話し方で、苦手だなぁ。と思っていたが、
そのアーティストが新譜を出したり、ラジオで新曲が先行で流れたりすると、MD(令和キッズはお母さんに聞いてみよう!)に焼いて持って来てくれた。
身の上話をするようになって信頼できる関係になって行った。

知り合って半年が過ぎる頃、いつも通り店で働いていると、午前3時ぐらいに酷く酔っ払った原田が店に来た。
それと同時に普段穏やかな話方とは違い、荒々しい口調で『なんでお前に良くしてやったかわかるか?』
ママが「あんたまたそういう飲み方になったの?」と言ってたので、きっとこれが本来の彼だったんだろう。
返答に困っていると、自分の返事を待たずに彼は座りきった目つきで、
『MD焼いたのも、色々あげたのも、お前の事好きだからだかんな!!』
と言った。

その場は笑顔で取り繕い「俺はその気ないよ~」と受け流した。
言った後にマズったと思ったのか、早々に原田は帰った。
帰った瞬間に涙が溢れた。

ママが「なんでコクられたお前が泣いてんだよ!!」と言った。

折角仲良くなったのに。
心が折れた時に話せる相手だったのに。
信用が信頼に変わるかと思ったのに。
好意に壊された。
好きという感情はこんなにも横暴なのか。

人を選ばずに、何でも寄り添う立ち振舞いは止めようと思った。
敬意のない人に対して、敬意を持って対応するのも止めよう。
こちらの心情を汲み取らない人には、遠慮せずに思ったことを言おうと思った。

どんなにどんなにどんなに同じ様な
シチュエイションでもあの日のように暖かくはない
木枯らしに吹かれて歩く僕のかたわらで笑うあの笑顔はない
大都会の愛もないドライなライフは意外と冷たい

─ Blue Be-Bop / RIP SLYME

当時よく聞いていたアーティストだ。

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